2019年4月から「働き方改革関連法案」が段階的に施行されました。
それまでは当たり前のように残業していたのに、せきを切ったように部署長や人事から

定時で帰りましょう

(罰金が発生するので)年休は必ず5日以上取得して下さい
などというワードをよく耳にするようになりました。(仕事量は変わらないのに!)
そんな時期に本屋で偶然手に取り、目次を読んだときに「これだっ!」と思いすぐに購入、これまで何度も読み返したのが今回紹介する本です。
私はこの本で紹介されたノート術を2019年からもう2年以上続けています。
もはやこのノート術を使わないと仕事をしていても不安になります。(何が不安かは本編で触れていきます。)
Amazonのレビューもそれほど多くはなく(2021年10月時点でレビュー61件)、あまり知られていない本ですが、個人的には名著だと思っています。
「ぜひ本ブログの読者の方にも読んでもらいたい」という熱い思いを込めて、今回は『残業ゼロのノート術』を紹介します。
著者プロフィール
この本の著者である石川和男(いしかわかずお)さんのプロフィールです。

石川和男さんは
- 建設会社総務経理担当部長
- 大学講師
- 時間管理コンサルタント
- セミナー講師
- 税理士
- ビジネス書作家
6つの仕事を掛け持ちするまさにスーパービジネスマンです。
20代後半から税理士試験合格を目指し、本書のノート術を活用し、残業をゼロにしつつ会社員を続けながら税理士試験に合格しています。
主な著書として
- 『30代で人生逆転させる1日30分勉強法』
- 『「残業しないチーム」と「残業だらけのチーム」の習慣』
- 『仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」』
などがあります。

特に3つ目の『仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」』は、これまでの集大成ともいえる名著だと思います。
気になる方は以下のリンクからチェックしてみて下さい。
あなたを悩ます残業の原因
「すぐやる」が仕事を遅くしている!
ひとつ目からかなり意外かもしれませんが、仕事を遅くする要因の代表作が「すぐやる」という習慣です。
上司、同僚から頼まれた小さな仕事にすぐに着手するたびに、本来その日でやるべきだった重要な仕事はストップしてしまいます。

ほんの何秒かストップするくらい、別によくない?
と思う方も多いかもしれません。
その数秒の積み重ね自体も無駄ですが、それよりも深刻なのは、
仕事の最中に別の小さな仕事を行うと、そのたびに集中力がリセットされてしまう
という点です。
「すぐやる」作戦が有効なのは、自分の中で「すぐやるタスク」と「そうでないタスク」の判断基準がちゃんとある人のみです。
「脳のマルチタスク」はNG
「脳のマルチタスク」とは、例えば以下のような行動のことを指します。
- 国語の読解問題を解きながらラジオを聴く
- 複数冊の本をまったく同時に読み進める
聖徳太子以外の人間は脳のマルチタスクはできません。
ただし、脳と体がそれぞれ別のことをする場合はマルチタスクが可能です。
例えば、
- ジムでバイクをこぎながらオーディオブックを聴く
これは脳のマルチタスクではないので何の支障もなく実施できます。
脳内を整理する一番簡単な方法
人間は「ほかにもやらなきゃいけないことがある」と考えると、それが原因で不安になったり、気分がモヤモヤっとして、目の前のことに集中できなくなる生き物です。
- 「すぐやる」のもダメ
- かといって放置していてもモヤモヤが生まれてダメ
ではどうすればいいのか。紙に書き出せばよいのです。
やることを紙に書き出すことで、一旦頭の中からそのことを追い出すことができます。

冒頭に話した「このノート術を使わないと仕事をしていても不安になる」というのはこれが理由です。
ある事柄を忘れないように長時間頭の片隅に留めておくのは脳にとって負担になり、非常に疲れます。
ふせんに書き出す4つのデメリット

なんでわざわざノートなの?やることを書き出すだけならふせんとかでもよくない?
と思う方も当然いらっしゃると思います。
「ふせんに書き出す」という方法には4つのデメリットがあります。
デメリット1:目につき過ぎる
デメリットの1つ目は「目につき過ぎる」ということです。
仕事中にふと目線を上げたときに自然とふせんが目に入り、その度に「あっ、これをやらなきゃいけないんだった」という意識が生まれてしまいます。
すると他の業務をしていても、いちいちふせんの内容が気になってしまい、目の前の仕事に集中できなくなってしまいます。
デメリット2:気にならなくなるリスクがある
デメリットの2つ目は先ほどと逆で、「気にならなくなるリスクがある」ということです。
同じ場所にふせんがある状態が常態化すると、それが気にならなくなります。
そしてそのうち粘着力がなくなり、剥がれ落ち、結局やることを忘れてしまいます笑
ノートの場合、書いた部分をいちいち開かなければなりません。
一見面倒臭くてムダなような気がしますが、この一手間を挟むことが大事なのです。
デメリット3:過去の振り返りができない
デメリットの3つ目として「過去の振り返りができない」ということです。
ふせんはタスクが終わったら捨ててしまうので、後から見返すことができません。
後に同じような仕事をする際に

あれっ?以前はどんな手順で進めたっけ?
どんな作業があったっけ?
となり、振り返ることができなくなってしまいます。
デメリット4:そのタスクの期限がわかりにくい
これが最も深刻なデメリットです。
ふせんにはタスクの期限を書き込むスペースがありません。(期限を書き込めるくらいデカいふせんは数枚しか貼れません笑)
「期限を決める」という考え方は残業をゼロにする上では本当に重要な考え方となります。
〆切があなたの残業を消す
仕事をスピードアップするために最も重要なポイントは、すべての作業に「〆切を設ける」ことです。
1958年にイギリスの歴史学者・政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソン氏が自身の著書の中で「パーキンソンの法則」という法則を唱えました。
パーキンソンの法則の第一法則は、以下のような内容となっています。

ちなみに第二法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。」というものです。
つまり、仕事が終わらない人は、細かい仕事に〆切を設定していないために、ダラダラと残業して〆切ギリギリまでやってしまうのです。
裏を返せば、〆切を本来よりも早く設定さえすれば、人はその〆切までに終わらせようとする心理が働くのです。
仕事を細分化し、それぞれに細かく〆切を設ける
残業をなくす「やることノート」
やることをすべて書き出すだけ
「やることノート」の作り方は
「やることをノートにすべて書き出し、終わった順に赤ペンで〇をつける」
突き詰めて言えばこれだけです。
具体的には、最初に35行の大学ノート(B5サイズなら1行が6mmのいわゆるB罫)の見開き両ページの各行に1~35までの数字を振ります。
1行を1コマとし、1コマの所要時間は15分に設定します。
そのため、一日8時間勤務の場合は、基本的に4×8=32コマを使用します。
また、この見開き2ページが、この後紹介するノートの使い方をもとにした「1日の仕事の最大総量」となります。
すべての仕事を15分で区切る
次に、その日の仕事を1コマの所要時間である15分単位で分割し、分割した仕事をやることノートに書いていきます。

15分で終わらない仕事もたくさんあるけど、どうすれば良いの?
という疑問に対する答えはズバリ「細分化」です。
どんな仕事も絶対に15分以内で終わる工程に分解できます。
ここに「やることノート術」のメリットの1つが隠されています。
やることノートに書くことで、どのくらい時間が掛かるか分からない仕事も自然と細分化できます。
なぜなら、15分以上掛かる仕事は15分で終わる細かい仕事に分解しなければノートに書けないからです。

逆に、分割しなくても15分以内で終えられそうなものは?

分割しなくても15分以内で終えられるものは、そのまま書き込めばOKです。
また、打合せや会議のように15分単位で分割できないものは「打合せ(1)」などと書いておきます。
「この仕事には何コマくらい使いそうか?」を考えることが重要
やることは「すべて」書き出す
重要なのは、やることを「すべて」書き出すことです。
そうすることで、脳の負担が激減します。
アメリカの第44代大統領のバラク・オバマ氏が在職中、紺か黒のスーツしか着なかったことは有名な話です。
この理由は2つあります。
1つは服を選ぶことに費やす「時間」を減らすことで、もう1つは「決断」を減らすことです。
服選びに費やす脳の負担を減らした分、脳に余裕ができるというわけです。
ルーチンワーク含め、すべてを1冊のノートにまとめると、いちいち考えずに即行動できるようになります。
やることをすべて書き出すことで脳の負担が大幅に減る
終わった仕事には歓喜の赤マルを、終わらなかった仕事には屈辱の青マルをつける
終えた仕事に赤ペンでマルをつければ自分の仕事の進捗具体が分かります。
達成した仕事の量を「見える化」できれば、「よし、もう折り返し地点まで来たぞ」と分かるので、やる気が出ます。
逆に、就業時間中に終えられなかったものは翌日に回すしかありません。
その日の就業時間の終わりに、終わらなかった仕事に青ペンでマルをつけ、次の日のやることノートに転記します。
終わらなかった仕事も青マルで「見える化」し、屈辱感を味わうことが大切です。

就業時間内に終わらなかったり、先延ばし続けると、終わるまで毎日ノートに同じことを書かなければならないので自然と先延ばししなくなります。正直、毎日同じ内容を書くのはかなり面倒です。
右ページには思いつきや新しい予定をすべて書き込む
先ほど説明したように、左ページには「仕事でその日のうちにやり終えなければならないこと」を書きます。
右ページには、以下のような「思いついたこと、思い出したこと、いきなり発生したこと」を書きます。
- 今日中にやらなくていいこと
- 突発的な仕事
- 他の人に頼める仕事
- 電話の応答メモ
- その日に入った新しいスケジュール
- プライベートのタスク
また、手帳やスケジュール管理アプリ、グーグルカレンダーなど複数に分散して予定を書き込む人もいるでしょう。
このようなことをしていると、漏れが発生したり複数の予定表を確認しなければならないので非効率です。
これを機に、やることノートに一元化することをオススメします。
やることノートがあれば、仕事を断れる
やることがすべてノートに書いてあれば仕事に優先順位をつけることが簡単になるため、優先度の低い仕事に時間を取られることもなくなります。
自分の抱えている仕事量を明確に把握することで、突発的な仕事を頼まれた場合でも「どこまで引き受けられて、何が無理なのか」がはっきり伝えれるようになります。
また、他の人に任せられるタスクには青い波線を引き、他の人に依頼してしまいましょう。
帰るときには、「やることノート」のすべてに何かしらのマークが入っているようにしましょう。

やってみると分かるのですが、仕事が片付いた後に赤マルをつけていくのはけっこう快感です。
ちなみに私は下っ端なので、青い波線はほどんど引くことはありません。
優先順位の高い仕事ができるのは実質4時間だけ
突発的な仕事のせいで、8時間の勤務時間のうち、本当に自分がやりたかった仕事ができるのは4時間くらい。
そこで大事なのは、ノートにやるべきことを書き終わった後に、「どの仕事を今日中に終わらせるか」という優先順位をつけることです。
優先順位を書き込む場所は、コマの中の業務内容の右隣などでOKです。
これで「やることノート」の作り方、使い方の説明は終わりです。
これまでに紹介した方法を実践するとどうなるのか、この本を一部引用して実際に見てみましょう。
左ページには適当に赤マルと青マルを追加してみました。


残業をゼロにする時間の使い方
午前中はガムシャラタイム
一日の中で人間が最も集中できる時間帯は、「起床してから昼食を食べるまで」の間です。
この時間が集中力のゴールデンタイムです。
ゴールデンタイム中は、15分ごとに進捗を確認することなく、ガンガン仕事を進めてしまっても大丈夫です。
この本の中では、ゴールデンタイム中は
- 電話を取り次がせない
- メールには返信しない
- 上司に声をかけないようにお願いする
といった策を講じているようですが、正直、いずれも平社員には難しいですね。

私が昔所属していた部署では「月曜日の始業時間からグループ会議(一時間半)」というゴールデンタイムの最高のムダ使いがありました。当時の私はこの本を読んだ後、グループ会議の日程の変更を打診しました。
視野をシンプルにする
「やることノート」で脳から余計なものを排除したように、視野からも余計なものを排除するのも有効です。
大塚商会の調査によると、ビジネスパーソンは年に150時間も探し物に費やしているそうです。
年間250日勤務するとすると、1日に36分も「何かを探す」というまったく生産性のないことに時間を費やしていることになります。
「集中して仕事をしていたのに、探し物のせいで集中力が切れてしまう」
とならないように、視野から余計なものを排除し、身の回りを整理しておきましょう。
「1年間使わなかったものは捨てる」という感じで、片付けにおいても「〆切」を設ける
自分もチームも残業させない仕事術
すべての基本は「アイスピック仕事術」
やる気を出すための基本はやはり、仕事を細分化することです。
どんな大きな仕事も、小さな仕事の集合でしかないため、細分化できます。
著者はこの方法を「アイスピック仕事術」と呼んでいます。

「氷山は溶けるまでに時間がかかるが、アイスピックで細かく砕かれた小さな氷はあっという間に溶けてなくなってしまう」という意味合いが込められたネーミングだそうです。

ナイスなネーミングですね。
考え込むのはNG!「5秒の法則」
アメリカのメル・ロビンス氏が自身の著書で「5秒の法則」という法則を唱えています。
簡単に言うと、「人は5秒で言い訳を考える」というものです。
そのため「やることノート」でそこに仕事内容を書き込んだら、そういう言い訳を見つけてしまう前にサッサと手をつけて片づけてしまうことが有効です。
手をつければ人はやりたくなる
韓国には「始まりが半分」ということわざがあります。
「ものごとは始めてさえしまえば全体の半分は終わったも同然」という意味です。
また、勉強でも「スリーミニッツ勉強法」という方法があります。
- 気が乗らなくても3分だけやってみる。
- 最初は3分だけと考えていても、一度始めてしまえば疑問点が湧いたり、「せっかく座ったんだから、もう少しやるか…」といった気持ちが出てくる。
- 気付いたら30分、1時間も行っている。
人は作業に手をつけると、それを続けたくなります。
このことを心理学では「作業興奮」といいます。
「真似ぶ」で学ぶ、「ルパン三世仕事術」
ルパンが財宝を盗むように、「仕事のやり方を盗む」というのも残業しないために有効な方法です。
世の中の仕事には、必ずといっていいほど前例があります。
前例を探し、そのやり方を盗めれば、大幅に手間が省けます。
逆に、豊富に前例があるのに、ゼロから悩んでしまうのは大変な無駄です。
火星に行くことですら前例があるのですから、私たちが手掛ける仕事にも必ず前例があります。
- 過去に作られた資料を見る
- 先輩に似た案件がなかったか聞く
などをして、類似する仕事を探しましょう。
朝イチで嫌なことを終えてしまう
どんな場面でもオススメなのは、「まずは嫌なことを終えてしまい、スッキリした状態で残りの仕事に集中すること」です。
「やることノート」には文字通り、やることがすべて書いてあるので、「このノート1冊だけを見れば仕事は大丈夫だ」という安心感を手に入れることができます。

私が一級建築士の勉強をしていた時は、自分が覚えていないこと、今後覚えないといけないことをノートにすべて書き出し、通勤時間にそのノートを見て勉強していました。
まとめ:やることをすべて書き出し、すべての仕事に〆切を設ける
今回は石川和男さん著の『残業ゼロのノート術』というビジネス本を紹介しました。
最後に、残業をしてしまう原因と、残業をしないための具体的な方法をまとめます。
- 優先順位を深く考えず、新たに発生した仕事に手をつけてしまう
- やるべきことを頭の中で抱え込んでしまう
- 〆切がないのでダラダラしてしまう
- 「やることノート」にやることをすべて書き出す
- 仕事は15分単位に細分化する
- 細分化した仕事すべてに〆切を設ける
- 「どの仕事を今日中に終わらせるか」という優先順位をつける
今や残業に対してネガティブなイメージしかない時代です。
更に、今後は残業代がなくなり、代わりに副業が完全解禁され、多くの人が複数のところから収入を得るのが当たり前な”複業”時代の到来も近いでしょう。
- 家に帰って家族団らんの時間を過ごす
- 趣味の時間を楽しむ
- 読者や勉強など自己研鑽の時間を確保する
など、プライベートも充実させるには、残業なんてしている「ヒマ」はないのです。
今回の記事を見て、気になった方は以下のリンクからチェックしてみて下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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