こんにちは、トライです。
突然ですが、皆さんは「未来工業株式会社」という会社をご存じでしょうか。
未来工業株式会社は、岐阜県安八郡に本社を構え、電気設備資材、給排水設備資材及びガス設備資材の製造・販売を行っている会社です。

1965年の創業以来、徹底した差別化と社員の幸福度を高める取り組みにより、
「赤字なし、平均経常利益率15%以上」という素晴らしい実績を誇るだけでなく、
- 2011年:第1回「日本で一番大切にしたい会社」大賞
- 2015年:第1回ホワイト企業大賞
- 2016年:緑化優良工場等経済産業大臣表彰
など、様々な賞を受賞しています。

未来工業の創始者である山田昭男(やまだあきお)さん自身も1989年に黄綬褒章を受章されています。
山田昭男さんへのインタビュー内容は数冊に渡って書籍化され、最初に書籍化された2011年11月からちょうど10年後の今でも、多くの人に読まれている人気の書籍となっています。
そんな中で今回は、最初の書籍『日本一社員がしあわせな会社のヘンな”きまり”』について、私の見解も交えてご紹介します。
私たちが今まで当たり前すぎて違和感すら覚えなかった会社の体制について、改めて考えさせられる素晴らしい内容の本でした。
- 成功している会社のあり方や経営者の考え方が知りたい。
- 仕事にやりがいを感じられず、悩んでいる。
- 部下との管理方法について悩んでいる。
- 競合他社に勝つにはどうすればいいのか。
未来工業 成長の理由
はじめに、未来工業の成長の理由について触れていきます。
なぜ未来工業は
- 赤字なし、平均経常利益率15%以上
- 2011年:第1回「日本で一番大切にしたい会社」大賞
- 2015年:第1回ホワイト企業大賞
- 2016年:緑化優良工場等経済産業大臣表彰
これらの素晴らしい実績を残す企業に成長できたのでしょうか。
その答えが本の冒頭にフローチャートでまとめられていました。

結論としては、以下の2点にとにかく注力したことが成長の理由のようです。
- 徹底した差別化
- 社員を幸福にする
未来工業 成長の理由①:徹底した差別化
徹底した差別化を実現するために、以下の4項目が挙げられています。
- よそと同じものなら作らない
- 儲かっていない会社と同じことはしない
- 日本一、日本初にこだわる
- 常に考える仕組みづくり
この中で本記事では、どんな企業に勤めている人にとっても参考になるヒントが多く隠されていた
「常に考える仕組みづくり」
について、次章で更に深堀りしていきたいと思います。
未来工業 成長の理由②:社員を幸福にする
社員を幸福にするために、未来工業では「餅を与えてモチベーションを上げる」という方法を取っています。
「餅」とは具体的には、
- それなりの給料
- 年間140日の休日
- 日本一短い勤務時間
- 月1万円のクラブ活動費
といった感じです。

「ザ・ホワイト企業」って感じだね。
餅を与えられた社員は
「ここまでしてもらったんだから、この会社のためにがんばろう!」
と思い、それが仕事へのモチベーションアップに繋がるといいます。
こうした「徹底した差別化」と「社員を幸福にする」取り組みにより、
「業績がアップする」→「利益がでたら社員に分け前を配る」→「さらに各自が考え、努力するようになる」
という正のループを実現したところに未来工業の成長の理由が隠されていたのです。
「常に考える」独創性を支える”改善提案制度”

改善提案制度とは
未来工業では常に考える習慣をつけるために「改善提案制度」が存在します。
「何をするにも、よそと差別化する」未来工業の改善提案制度は以下のような内容となっています。
- どんな内容でも書いて提出すれば、封を切る前に1件につき500円が支給される。
- 月毎に表彰がある。参加賞:500円~1等:3万円
- 年毎に表彰がある。優秀提案賞:3万円、多数提案賞(提案件数による奨励金:5000円~15万円)
- 審査基準は「有形無形の効果(金額等)」「発想(アイデア)」「努力(完成度)」など4項目。
- 年間で改善提案を200件出すと10万円。(多数提案賞と合わせると計25万円)

封を空ける前に500円が支給されるなら、適当に書いて出す人が出てきそうだけど…

自分の名前を書いて提案するとなると、「500円欲しさに超適当なことを書く」なんてことはなくて、みんなちゃんと考えてくるそうです。

なるほど。真面目な日本人の気質を上手く利用した制度だね。
改善提案制度によりもたらされる好循環
実際に未来工業で働く社員は、この提案制度には以下のようなメリットがあると感じているようです。
- 自分のアイデアが「お金」という形になって報われる。
- 「自分の提案が職場環境や仕事の質を高めた」という自負が、個人のやる気につながる。
世間一般のサラリーマンに蔓延している
「どうせ何を言ったって会社は動いてくれないし、変わらない。」
という考えにさせない工夫として、この改善提案制度は非常に理にかなっています。

「頑張ったところで給料に反映されない」とモチベーションが下がっている人にとっては夢のような制度だね。

改善点が山積みのうちの会社でも導入してくれないかな。
また、こうした提案はひとつひとつは小さなことかもしれませんが、その積み重ねで職場は良くなっていくものです。
例えば、今から30年以上前の1989年に放送されていた「リゲイン」という栄養ドリンクのCMの中で
「24時間戦えますか」
というフレーズがあり、話題となりました。
今こんなCMを放送したら、即「大炎上→謝罪→放送中止」となるでしょう。
昔は、今でいうブラック労働が当たり前の時代で、同時にそれに疑問を持つ人も少なかったと推測されます。
こうした労働環境の改善も、ひとつひとつの小さな提案の積み重ねなのです。
発想のヒントについて
年間200件の改善提案と聞くと、

年間200件提案するなんて本当にできるの?どの程度の提案なの?
といった疑問が浮かぶと思います。
改善提案の発想のヒントとしては、以下の2つの方法があります。
- 自分の経験から「何か改善できるところはないか」と考える。
- お客さまからの「こんなことで困っている」という声を集め、それを解決する。
順番に具体例を挙げながら見ていきます。
自分の経験から「何か改善できるところはないか」と考える。
1つ目の方法は、「何か改善できることはないか」と考えるという方法です。
例えば、過去には以下のような提案があったそうです。
- 会議室内のパーテーションの操作手順についての問合せが多いので、パーテーションの操作手順を書いた紙を貼る。
- プリンターのパワーセーブボタンを押し忘れてしまう人が多いので「パワーセーブしましょう」と書いた紙を貼る。
いかがでしょうか?
「これくらいなら自分でもできるかも。」
と思ったのではないでしょうか。

これくらいなら自分にもできそうだし、お金も貰えるなら「もっと職場を良くしよう」という気になるね。

そういえばこういった紙って私の会社のオフィスにも貼ってあるわ。
お客さまからの「こんなことで困っている」という声を集め、それを解決する。
2つ目は、「お客さまからの”こんなことで困っている”という声を集め、それを解決する」という方法です。
お客様の素直な声というのは、改善提案の一番のヒントになるといいます。
それをひたすら集め、解決する方法を考えていくわけです。
いわゆる「問題点の洗い出し」ですね。
この考え方は提案制度に留まらず、B2C(Business to Customer)ビジネスの基本ともいえる重要な考え方です。
「ホウレンソウ禁止」が生んだ仕事のやりがい

社員は自分で考え、判断し、行動すればいい
創始者の山田昭男さんは、ホウレンソウ禁止について、以下のように語っています。
いちいち上司に報告している時間も労力も電話代ももったいない。
情報は最低限のものを共有していればいい。
社員は、自分で考えて、自分で判断して、行動すればいいんだよ。
例えば出張だって、自分が必要だと思ったら経理に請求して、勝手に出かければいい。
上司への経過報告も相談もいらない。
上司よりも多くの情報を持っていて、いいか悪いかを最も的確に判断できるのは、その場にいる自分なんだから。
他の会社では考えられないかもしれないが、うちはずっとそういう方針でやってきたし、そうやって業績を伸ばしてきた。
第一、全部自分でやれるのはうれしいだろ?
これも社員を幸せにする”餅”のひとつだよ。
引用元:『日本一社員がしあわせな会社のヘンな”きまり”』P.54,55
- 「自分(担当者)は上司よりも多くの情報を持っている」
- 「全部自分でやれるのは嬉しい」
私はこのふたつに関しては特に深く納得しました。
実際のところはどうなのか?社員インタビュー
先ほどの山田昭男さんのインタビューでは「出張だって必要だと思ったら勝手に行けばいい」と語っていました。
とはいえ、上司への相談なしに勝手に出張に行くのはさすがに普通は出来ないでしょう。
「実際はどのあたりに落ち着いているんだろう?」
という疑問に対する回答として、未来工業に勤めている社員へのインタビューが載っていました。
もちろん、最低限の相談などはしますが、それは義務ではありません。
世間では、まず上に話を通さないと話が進まないのが一般的だと思いますが、当社では現場レベルの担当者1人ひとりの判断を重要視していただけるので、ホウレンソウはしなくていいとされています。
ですから、同じ部署内で考えると、上司との人間関係はわりとフレンドリーだと思います。
上司と部下というよりも、純粋に先輩という位置づけに近い印象です。
知識が豊富な方には相談をしていきますが、上司への報告義務のような感覚ではないです。
それはどの社員も同じだと思います。
引用元:『日本一社員がしあわせな会社のヘンな”きまり”』P.71
これを見てやっと「なるほどな」と府に落ちました。
ホウレンソウ禁止(不要)だからといって、本当に全くホウレンソウしなくことはなく、

自分の考えが大きく間違っていないか、ちょっと相談したいな。

これは進める前に事前に伝えておこうかな。
といった感じで、「本当に重要なことは自然と情報共有する」状態になるのです。
私はホウレンソウ、つまり報告・連絡・相談はチームで仕事をする上では必要なことだと考えています。
しかし、過度に「強制」されてしまうと、どんなに素晴らしいことでも楽しくなくなるのが人間の自然な感情です。
楽しく働けず、モチベーションや幸福感が低ければ、結果として会社の儲けも出なくなってしまいます。
- 全部自分の裁量で決めていいという”餅”を与える。
- 任せることで、社員が自分で考え、行動するようになる。
- どんなに素晴らしいことでも、「強制」されたら楽しくなくなる。
この「裁量が多いとやりがいが増える」というのは、『心理的安全性のつくり方』という本の中でも述べられています。
「上から降ってきた仕事をただこなすだけの仕事」というのは、実に退屈でつまらないものです。

試しにやってみて、ダメだったら戻せばいい

経験がないのに先入観で決めつけるな
以前、山田昭男さんは、講演会で提案制度やホウレンソウ禁止について述べたところ、参加者から
「山田さんでなければ、そういう会社は作れないのでは?」
と質問されたことがあるそうです。
これに対する山田昭男さんの回答はこうでした。
「多くの中小企業の経営者がダメなのは、経験がないのに先入観で決めつけることだ。」
「自分でやってもいないのに、どうしてそんなことがわかるの?」
「もしわかっているなら、なぜその会社は利益が上がらないのか。」

こう言われ、質問者は黙ってしまったそうです。
その昔、未来工業は岐阜県内の企業としては初めて週休二日制を導入したそうです。
その際も
「週に2日も休んだらお客さんに逃げられる」
といった意見が四方八方から飛んできたそうです。
その際も山田昭男さんの考えとしてあったのは、
「試しにやってみて、ダメだったら戻せばいい。」
という発想でした。
結果としてどうでしょう。
今では週休二日は当たり前、最近では週休三日を導入する企業も出てきました。
「勝手な想像だけで無理と言ったらダメだ。」という山田昭男さんの考えが体現されているエピソードですね。
まとめ

今回は『日本一社員が幸せな会社のヘンな”きまり”』から、仕事のやりがいや職場改善のヒントについて考えてみました。
未来工業は、「社員がやりがいを持って幸せに働ける環境を作ること」に徹底的にこだわっています。
そこには「社員が”この会社のためにがんばろう!”と思ってくれなければ、会社が発展するわけがない」という考えがあったのです。
未来工業と会社の規模が異なろうが、自分が社長でなく平社員であろうが、未来工業の取り組みの中で真似できるところがあったら、恐れずに行動に移してみるべきだと強く感じることのできる内容でした。
最後に、この本で繰り返し述べられていた「あなたの職場を成長させるための4つのヒント」を以下にまとめます。
- 常に考える。
- 他人と差別化する。
- いいと思ったことは恐れず行動に移す。
- ダメならすぐに戻す。
本記事を読んで、何かひとつでも「役に立った」と感じていただけたなら大変嬉しいです。
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最初から最後までインタビュー口調の親しみやすい文章構成となっているため、ビジネス書としてではなく、単純な「読み物」としてもかなり面白いです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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