近年、累計90万部を突破した『人は話し方が9割』や『雑談の一流、二流、三流』のような「話すこと」に関する書籍の売れ行きが絶好調です。

IT技術がいくら進歩したところで、ビジネスは人と人との関わりなしには成立しないということですね。
今回は、そんな昨今の「話す」ブームのはるか前、今から7年前の2015年に発売され、累計50万部を突破した『超一流の雑談力』という本について解説します。
私は、話し方やビジネス現場におけるコミュニケーションに関する書籍を好んで読んでいますが、そういった書籍で「これが重要です」と述べられていることはだいたい共通しています。
そこで本記事では、『超一流の雑談力』に書かれている内容のうち、他のビジネス書でも共通して述べられている点に絞って解説していきます。
営業職ではなく、私のような技術職の人間でも使えるテクニック満載でお送りしますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 仕事で客先と話すのが苦手だ
- 上司とのコミュニケーションがうまくいっていない
- 雑談がうまくなるための糸口が欲しい
- 効果抜群の決めフレーズが欲しい
著者プロフィール
まずはいつものように著者プロフィールをご紹介します。

著者の安田 正(やすだ ただし)さんは、株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役です。
1990年より法人向け英語研修を始め、現在は英語の他、ロジカル・コミュニケーション、プレゼンテーション、対人対応コーチング、交渉などのビジネスコミュニケーションの領域で講師、コンサルタントとして活躍しています。
大手企業を中心に1700社に研修を行い、一般社員の他に役職者1000人以上の指導実績があります。
また、東京大学、早稲田大学、京都大学、一橋大学などでも教鞭をとっています。
開始1分の「自己開示」で相手の警戒心を取り除く

具体的なテクニックを紹介する前に、はじめに興味深い研究結果について紹介させてください。
様々な研究の結果、「その人に対するおおむねの評価は会話が始まってから1分、最長でも4分で決まる」ことが分かっています。
つまり、会話の後半でいくら頑張ったところで、その人の評価は会話開始1分までにほぼ決まってしまっているのです。
そこで、ひとつ目として、会話の序盤でぜひ取り入れたいテクニックをご紹介します。
それは、適度な「自己開示」をすることです。
自己開示とは、「自分はこういう人間です」と相手に伝えることです。
自己開示をすることで、相手の警戒心を取り除き、距離を縮めていくことがはじめの一歩となるわけです。
自己開示の具体的なやり方としては、以下のような方法を取りましょう。
- 自慢話はしない
- 軽い失敗談を話す
ひとつ目の「自慢話はしない」というのは、もはや解説不要ですね。
ふたつ目の「軽い失敗談を話す」については、“軽い”というのがポイントです。
- 「この人は人間的に大丈夫か?」と相手が引いてしまうエピソード
- 身の上話
これらは避けたほうが良い、NGな失敗談です。
さらに自己開示では、自分の見え方やキャラクターなども考慮に入れたいところです。
意外性や良いギャップを生む情報を盛り込めると更に良いです。
例えば、
- 見た目は軽そうなのに実はまじめ
- まじめに見えるのに実はユーモアがある
みたいなギャップを相手に与えられるとGOODです。
タテとヨコー会話の2つの軸

自己開示で相手の警戒心を取り除いた後は、更に距離を縮めるために軽く雑談をします。
雑談をする上で意識したいのは、「相手を乗せること」です。
その際に大事な考えとなるのが、会話における「タテ」と「ヨコ」という2つの軸です。
- タテの軸:会話の深さ
- ヨコの軸:何を話題にするか
この2つの軸を理解したうえで、
“様々な話題をふりながら(ヨコ展開)、「この人は何に興味があるのか」「どんな話をすれば会話が深まっていくのか」を探っていき、相手が乗ってきたところでその話題を深めていく(タテ展開)”
これが雑談の必勝テクニックです。
本書から具体例を2つ引用します。


雑談に適したテーマ
先ほど「様々な話題をふる」と述べましたが、では「雑談に適したテーマ」とは何なのでしょうか。
雑談は、ある程度の気軽さがないとうまく盛り上がりません。
具体的には、熱い議論に発展しないような「誰にでもあてはまるような当たり障りのない話題」が適しています。
- 気候
- 相手の会社情報
- 衣服、ファッション
- 健康
- 趣味
- 最近のニュース
- 共通のこと
- 出身地
- 血液型
- 仕事

これらの当たり障りのない話題を「ヨコの軸」として使い、相手が乗ってきた話題の「タテの軸」を深めていきましょう。
また、雑談における鉄則のひとつとして、「決して議論をしてはいけない」というのは覚えておきましょう。
相手に興味を持ってもらえる話とは
初対面の人や、ちょっと距離感のある人との雑談では、下手な笑い話よりも、相手が興味のある話をしたほうがよいです。
では、相手に最も興味を持ってもらいやすい話とはどんな話でしょうか。
それは、「相手に実益のある話」です。
「雑学」ではなく、「実益の知識」をうまく提供していけると良いというわけです。
では、どんなジャンルの実益の知識を持っておくのが良いのでしょうか。
理想は「違うジャンルで常時5、6個」で、相手の年齢や性別を選ばない幅広いネタを持つようにすると良いです。
具体的には、以下のようなジャンルがお手軽でオススメです。
- 自分の本業に関する面白い話
- 健康の話
- スポーツの話
- 最近気になる商品
- 面白かった映画や本
相手が気持ちよくなる「聞き方」のテクニック4選

これまでは「話すときのテクニック」を紹介しましたが、実は会話というのは、「話すこと」よりも「聞くこと」、いわゆる「傾聴力」のほうが圧倒的に重要です。
というわけで、ここからは「聞くときに使えるテクニック」を紹介します。
あいづちの「さしすせそ」
相手の話を聞く際の前提として、相手の話はうなずき、あいづちを打ちながら聞くように意識しましょう。
相手の話を無反応で聞いていると、相手から

あれっ?この人ちゃんと話聞いてるのかな?
と思われてしまう危険性があるからです。
細かいテクニックとしては
- 言葉数の多い人なら小刻みにうなずく
- 間が多めの人ならひとつひとつのうなずきを大きくする
といった感じで、相手のタイプによってうなずき方を少し調整できるとGOODです。
また、あいづちを打つ際の便利なフレーズとして、あいづちの「さしすせそ」というのが非常に有名です。
- さ:さすがですね!
- し:知らなかったです!
- す:素敵ですね!
- せ:センスがいいですね!
- そ:それはすごいですね!
これらに共通するのは、「相手の話に興味がある」というリアクションを取ることです。
「ああ、この人は話をちゃんと聞いてくれてるな」と相手に感じてもらうことがゴールになります。

ちなみに私の妻は会社の飲み会で、この“あいづちの「さしすせそ」”を連発する女子に遭遇し、「うわっ、あざといなぁ」と感じたみたいです。

乱用するのは逆効果ね。
オウム返しで相手の話を促す
雑談の際に困るのが、相手の話題がこちらの知らないキーワードだったり、詳しくない分野だったりした場合です。
そんなピンチの時にかなり有効なテクニックが「オウム返し」です。
オウ返しをする際のポイントは、質問形式で返す際、話が広がりそうな言葉を付け加えることです。
付け加える際のコツとしては、相手のこだわっていることを褒めることです。
例えば、肌がきれいで、見た目が実年齢より若い人には

失礼ですが、とてもきれいなお肌をされていますね。
何か特別なことをされているんですか?
といった感じで話します。
他にも、以下のような感じで相手のこだわりポイントを探ってみましょう。
- スーツのラインがきれいで、オシャレに気を使っているオーラを持った人
- 他はそうでもないのに、時計だけは気合が入っていそうな人
- ネクタイの柄がちょっと変わっている人
相手のこだわりポイントと一致しているかどうかは、相手の表情が明るくなるかどうかで判断しましょう。
相手の表情が明るくなれば、あなたは相手のこだわりポイントを褒めることに成功しています。
相手の答えに対しては「要約」して応える
先ほどのオウム返しに加えて、「要約して応える」というテクニックも非常に有効です。
例としては、以下のように応えられるとGOODです。
- つまり例えるなら〇〇のようなものでしょうか?
- ということは、××ということですか?
- 私の業界でいう△△のようなものなんですね。
ポイントは、例えや置き換えなどを使い、自分の理解の度合いを相手に伝えることです。
こうした一言が「頭の回転が速い人」「話をよく聞いてくれる人」という良い印象を残してくれます。

この「オウム返し」や「要約して応える」というのは、明石家さんまさんがよく使うテクニックです。特に「踊る!さんま御殿」のときによく使っているので、ぜひ一度そういう視点で見てみると面白いと思います。
つぶやき褒め
最後に「ここぞ!」というときにぜひ試していただきたいテクニックがあります。
相手からためになることを教えてもらったり、感動するような言葉をもらえたとき、
「つぶやくように感想を言う」、「相手を褒める」という方法です。
- 「いや~さすがだなぁ、その視点はなかったなぁ」
- 「なんか〇〇さんの話は納得できるんだよなぁ」
といった感じです。

ちなみにこの「つぶやき褒め」は、以前サバンナの高橋さんがしゃべくり007の収録で「先輩に気に入られるためのテクニック」として語っていました。

やっぱり売れている芸人さんはこういったテクニックが身についているんだね。
雑談から本題へ移る際のテクニック

雑談で良い空気をつくったら、いよいよ本題に移ります。
雑談から本題への自然な移行するときの最大のコツは、「あくまで雑談からヒントを得た体」で行うことです。
最悪な例としては、

(雑談でせっかく良い空気ができあがった後にいきなり)ところで本日は…
と少し間をつくって話し始めてしまうことです。
会話の流れを断ち切ることになり、少し不穏な空気が生まれてしまいます。
すると相手も緊張してしまい、話を警戒される可能性が高くなります。
繰り返しになりますが、とにかく重要なのは、雑談がヒントになって「そういえばー」という体で本題に移ることです。
まとめ:雑談力とは「自分が話す力」ではなく「相手に話させる力」

今回は『超一流の雑談力』について解説しました。
本記事で紹介したテクニックを以下にまとめます。
- 開始1分で自己開示をして、相手の警戒心を取り除く
- 様々な話題を振り、相手が乗ってきた話題を深堀りする
- 相手の興味のある話(実益のある知識)を提供する
- 相手のこだわっていることを褒める
- 「オウム返し」や「要約して応える」テクニックを駆使し、相手を乗せる
- ためになることを教えてもらったら、つぶやくように相手を褒める
お気付きかもしれませんが、結局のところ「超一流の雑談力」とは、講演家のように流暢に、一方的に話すことではありません。
超一流の雑談力とは、「自分が話す力」ではなく「相手に話させる力」なのです。
本記事で紹介したテクニックはいずれも、相手に気持ちよく話してもらうためのテクニックです。
よく「聞く:話す」の理想的な比率は「8:2」だと言われています。
結局は「自分が話す」ことよりも「相手に話させる」ことの方が重要なのです。
この類のオススメのビジネス書は本ブログで引き続き紹介していきますので、今後もぜひお読みください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回ご紹介した書籍が気になった方は、以下のリンクからどうぞ。
ちなみに続編も出ています。
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