今回は「梁のたわみを求める問題」を解説します。
前回解説した「静定トラスの軸力を求める問題」と同様、毎年必ず出題されている優先度Aの問題です。
基本的には公式さえ覚えていれば解ける問題が多いですが、たまに難易度の高い問題も出題されます。
そこで本記事では
- 覚えておくべき公式13選
- 例年出題される難易度普通の問題
- たまに出題される難易度やや高めの問題
これらについて解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
- 確実に得点するために覚えておくべき公式
- 梁のたわみを求める問題の解き方
- やや難易度の高い問題へのアプローチ
一級建築士試験で覚えておくべき梁の公式13選

まずは梁のたわみの問題を確実に得点するために覚えておくべき公式を確認しておきましょう。
はじめに結論ですが、覚えておくべき公式は全部で13個です。
覚えておくべき公式No.1~4:単純梁の曲げモーメントと最大たわみ
覚えておくべき公式No.1~4は、単純梁の曲げモーメントと最大たわみの公式です。
これが最初に覚えるべき、最も基本的で最も重要な公式です。
単純梁とは、支点の拘束条件が「片側ピン支持、片側ローラー支持」の梁のことを示します。
荷重の種類については、
- 単純梁の中央に集中荷重 P が掛かる場合
- 単純梁の全長に渡って等分布荷重 w が掛かる場合
以上の2パターンをおさえておきましょう。

覚えておくべき公式No.5~8:両端固定梁の曲げモーメントと最大たわみ
覚えておくべき公式No.5~8は、両端固定梁の曲げモーメントと最大たわみの公式です。
先ほどの単純梁は支点の拘束条件が「片側ピン支持、片側ローラー支持」でしたが、両端固定梁はその名の通り「両端固定支持」です。
固定支持とは、変形だけでなく、回転も拘束した支持条件です。


補足ですが、両端固定梁の中央の曲げモーメントMCは以下のようになります。
- 集中荷重Pの場合:MC = Pl / 8
- 分布荷重wの場合:MC = wl2 / 24
覚えておくべき公式No.9~12:片持ち梁の曲げモーメントと最大たわみ
覚えておくべき公式No.9~12は、片持ち梁の曲げモーメントと最大たわみの公式です。
単純梁の公式と同様、最も基本となる公式のひとつなので、確実に覚えておきましょう。

覚えておくべき公式No.13:矩形断面の断面二次モーメント
覚えておくべき最後の公式は、矩形断面の断面二次モーメントを求める公式です。
矩形断面とは、正方形や長方形といった四角い断面のことを示します。
断面二次モーメントは「部材の変形しにくさ」を示す値だというイメージでOKです。
梁幅(横方向)を b, 梁成(縦方向)を h とすると、断面二次モーメント I を求める公式は以下の式で表されます。


以上で覚えておくべき公式13選は終了です。
例年出題される難易度普通の問題

ここからは先ほど厳選した公式13個は頭に入っている前提で、難易度ごとに過去問から抜粋して実際に解いていきます。
はじめに、例年出題される難易度普通の問題を解説します。
「難易度普通の問題」とは、「公式さえ分かっていれば解ける問題」を意味しています。
例として、令和元年度の本試験を見てみましょう。

この問題は、単純梁の中央に荷重 P を受ける梁のたわみを比較する問題です。
繰り返しになりますが、中央に集中荷重 P を受ける単純梁のたわみ δ は以下の公式を用います。

梁の変形しにくさを表す断面二次モーメント I は以下の公式を用います。

この問題はこの2つの公式だけ覚えていれば解けるので、実際に解いていきます。
Aは梁幅が2a、梁成が2aなので、断面二次モーメントIA は以下のようになります。

次にBですが、 Aは梁幅がa、梁成が2aの梁が2つあるので、断面二次モーメント IB は以下のようになります。

最後にCですが、 梁幅が2a、梁成がaの梁が2つあるので、断面二次モーメント IC は以下のようになります。

ここまでですべての断面二次モーメントが求まったので、たわみ δ の前に断面二次モーメント I の比を見てみましょう。

たわみ δ と断面二次モーメント I は反比例の関係なので、たわみの比としては、

となり、正解は「2」となります。
難易度やや高めの問題

次に、難易度やや高めの問題を扱います。
「難易度やや高めの問題」とは、「公式だけ覚えていても解けない問題」を意味しています。
公式を覚えた上で、もうひとつ工学的判断を求められる問題として、令和2年度の本試験を見てみましょう。


この問題のような十字型の梁は「二方向梁」もしくは「十字梁」と呼ばれています。
この問題は、以下のような考え方ができるかどうかがポイントです。
- 集中荷重 P の位置において、A材とB材のたわみ量は同じである。
- 集中荷重 P は、A材とB材の両方で負担する。
もう少し具体的に言うと、
- A材が負担する荷重 PA によるA材のたわみ量 δA
- B材が負担する荷重 PB によるB材のたわみ量 δB
この値が同じだということになります。
荷重 PA によるA材のたわみ量 δA は以下の式で表されます。

同じように、荷重 PB によるB材のたわみ量 δB は以下の式で表されます。

A材とB材は集中荷重 P の位置でつながっているため、δA と δB は同じ値になります。
そのため、以下の関係式が成立します。

これを解いていくと、PA : PB は以下のようになります。
8PA = PB ⇔ PA : PB = 1:8
また鉛直方向の力のつり合いとしては、集中荷重 PA と支持点の反力 RA ×2箇所がつり合っているので、
RA + RA – PA = 0 ⇔ RA = PA /2
RB + RB – PB = 0 ⇔ RB = PB /2
よって、今回設問で問われている RA : RB は以下のようになり、答えは「4」となります。


今回のように「公式+工学的判断」を要する問題については、過去問をこなして慣れていきましょう。
まとめ:まずは公式を覚え、過去問で工学的判断力を鍛えよう

今回は、梁のたわみを求める問題について、覚えるべき公式を紹介し、過去問の解き方を解説しました。
とにもかくにも、公式を覚えないことには始まりません。
本記事で紹介した公式13個をまだ覚えていない人は、
- 通勤中の電車
- 昼休憩
- 現場への移動中
こういったスキマ時間を有効活用して早めに覚えてしまいましょう。
次回は「ラーメン架構の全塑性モーメントに関する問題」について解説していきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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