一級建築士構造力学徹底対策④:崩壊荷重Puを求める問題の解き方を4ステップで解説

一級建築士 構造力学 全塑性 一級建築士試験

今回は「全塑性モーメントに関する問題」について解説します。

全塑性モーメントに関する問題は、主に以下の3種類が出題されます。

全塑性モーメントに関する問題
  1. 崩壊荷重 Pu を求める問題
  2. 崩壊機構から断面力を求める問題
  3. 全塑性時の応力度を求める問題

このうち、本記事では「1. 崩壊荷重 Pu を求める問題」を扱います。

他の2種類の問題に比べると難易度が最も低いため、確実に得点しなければならない問題です。

また「2. 崩壊機構から断面力を求める問題」を解く上でも、今回解説する内容が必要となります。

ぜひ最後までお読みいただき、得意問題にしてください。

予備知識①:仮想仕事の原理

はじめに、 崩壊荷重 Pu を求める問題を解く上で必要な予備知識を2つに厳選して解説します。

ひとつ目の予備知識は、崩壊荷重 Pu を求める問題は「仮想仕事の原理」を用いて解くということです。

仮想仕事の原理?そんな難しそうなこと言われても分からないよ。もう諦めたわ。

とならなくても大丈夫です。

「外力による仕事と内力による仕事量がつり合っている」

とだけ覚えておいてください。

予備知識②:θ が非常に小さい場合、sinθ と θ の値は同じになる。

ふたつ目の予備知識としてはθ が非常に小さい場合、sinθθ の値は同じになる」ということです。

どういうことか、下図のような半径1の円について考えます。

一級建築士 構造力学 全塑性

θが大きい場合、図のように1sinθ と円弧の長さ1θ の長さには差があります。

しかし、θ が非常に小さい場合、1sinθ1θ の長さがだいたい同じになります。

トライ
トライ

これは一級建築士の構造力学に限った話ではなく、高校数学Ⅲでも同じ内容を習います。

令和2年度の本試験を解説

ここからは先ほどの予備知識を踏まえ、実際に令和2年度の本試験を解いていきます。

令和2年度 一級建築士 学科Ⅳより引用

はじめに、この問題を解く手順をまとめておきます。

崩壊荷重 Pu を求める問題を解く手順
  1. 水平変位量 δ と変形角 θ を確認する
  2. 外力仕事量 Puδ を求める
  3. 内力仕事量 ΣMpθ を求める
  4. 外力仕事量と内力仕事量のつり合いから崩壊荷重 Pu を求める

手順①:水平変位量 δ と変形角 θ を確認する

図2の崩壊機構の図から、水平変位量 δ と変形角 θ を求めます。

【水平変位量 δ

水平変位量 δ は先ほどの予備知識②よりδ = 3sinθ = 3θ となります。

【柱の変形角 θ

柱ABの変形角をθとします。

柱CDの長さは柱ABの2倍なので、変形角は柱ABの1/2倍、つまりθ/2となります。

【梁の変形角 θ

梁の変形角 θ の算出はこの問題を解く上で最も重要となるので、少し詳しく解説します。

梁の変形角 θ を求める際に大切なのは「梁にヒンジがなかったら部材の向きがどうなるか」を考えることです。

梁にヒンジがなかったら、梁は下図の赤い線のような向きになります。

「崩壊機構のように梁が水平になるためには、梁が反時計回りに θ 回転すればよい=梁の回転角は θということになります。

トライ
トライ

この考え方を理解しておかないと、平成28年度の本試験のような問題で、もし回転角を自分で求めなければならない場合に高確率で間違えてしまいます。

変形角 θ について

一級建築士 構造力学 全塑性
平成28年度 一級建築士 学科Ⅳより引用

手順②:外力仕事量 Pu・δ を求める

続いて、崩壊荷重 Pu(外力)がした外力仕事量 Puδ を求めます。

崩壊荷重 Pu は左側1箇所にしかないので、外力仕事量としては、

Puδ = Pu・3θとなります。

手順③:内力仕事量 ΣMp・θ を求める

次に、内力仕事量 ΣMpθ を求めます。

トライ
トライ

ちなみに全塑性モーメント Mp とは、部材にヒンジが生じる際に部材が負担している曲げモーメントのことです。

設問にあるように、

  • 柱の全塑性モーメントMp(柱) = 400kN・m
  • 梁の全塑性モーメントMp(梁) = 200kN・m

なので、それぞれのヒンジ位置における内力仕事量は以下のようになります。

  • A点(柱):Mp(柱)θ = 400θ
  • B点(梁):Mp(梁)θ = 200θ
  • C点(梁):Mp(梁)θ/2 = 200・θ/2 = 100θ
  • D点(柱):Mp(柱)θ/2 = 400・θ/2 = 200θ

これらを合計し、内力仕事量 ΣMpθは、

400θ + 200θ + 100θ + 200θ = 900θ となります。

手順④:外力仕事量と内力仕事量のつり合いから崩壊荷重 Pu を求める

最後に、これまで求めた外力仕事量と内力仕事量のつり合い式から崩壊荷重 Pu を求めて終了です。

Pu・3θ (kN・m) = 900θ (kN・m) ⇔ Pu = 300 (kN)

となり、正解は「2」となります。

まとめ:変形角 θ を正しく求められるかがポイント

今回は全塑性モーメントに関する問題の中で、崩壊荷重 Pu を求める問題の解き方について解説しました。

「それほど難しくないな」という印象を持ってもらえれば嬉しいです。

この問題でポイントとなるのはズバリ「変形角 θ を正しく求めること」です。

今回解説した変形角 θ に対する考え方を理解した後は問題演習を繰り返して、確実に得点できるように対策しましょう。

次回は全塑性モーメントに関する問題のうち、「崩壊機構から断面力を求める問題」を扱います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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