今回は「正しい曲げモーメント図を求める問題」について解説します。
曲げモーメントに関する問題は、3年に2回ほどのペースで出題される重要度Bの問題です。
その割には基礎的な内容が多く、難易度は高くないので、確実に得点しておきたい問題です。
今回は、以下の3部構成でお届けします。
- 問題を解くための予備知識
- 実際の過去問を使った基本的な解き方
- 構造が得意な人の効率的な解き方
特に3つ目の「構造が得意な人の効率的な解き方」は、問題を解く時間を劇的に短縮できると思うので必見です。
ぜひ最後までお読みください。
問題を解くための予備知識
はじめに、正しい曲げモーメント図を求めるために必要な予備知識をまとめます。
断面力を求めたい位置で切断した際の断面力の方向は以下のように仮定します。
- 軸力 N:引張方向を+とする。
- せん断力 Q:時計回り方向を+とする。
- 曲げモーメント M:下が凸になる方向に仮定する。※時計回りを+とする


梁の場合、上下のイメージはすぐつくけど、柱の場合はどっちが上下になるの?

ラーメン架構の中に立ったときの内側が「下」、外側が「上」だと理解しておけばOKです。
実際の過去問を使った基本的な解き方

ここからは実際の過去問を使って、まずは基本的な解き方で解いていきます。
手順①:支点の反力を求める
まず初めに、支点の反力を求めます。

手順②:断面力を求めたい位置で切断し、力のつり合い式を解く
反力が求まったら、各部材をある距離 x の位置で切断し、力のつり合い式から断面力を求めます。


以上の計算で求められた断面力をまとめると、以下のようになります。

構造が得意な人の効率的な解き方


確実な解き方なのは分かったけど、毎回さっきみたいにするのは大変だわ。

構造が得意な友達がいて、その人は解くのがすごく速いんだけど、どうやって解いているんだろう。
という方のために、「構造が得意な人はどう解いているのか」についてをご紹介します。
手順①:支点反力を求める
初めにやることはやはり「支点反力を求めること」です。
曲げモーメントに関わらず、部材の応力を求める際には、まず支点反力を求めることから始めましょう。
手順②:支点反力から曲げモーメントの勾配の有無を判断する
支点反力が求まったら、支点反力から曲げモーメントの勾配の有無を判断します。
具体的には、以下のような判断を下します。
- 材に直交する支点反力があれば、曲げモーメントは勾配を持つ
- 材に直交する支点反力が無ければ、曲げモーメントは一定もしくは0
言葉だけだと分かりにくいと思いますので、先ほど解いた過去問の反力と曲げモーメントの関係を見てみましょう。


A点は部材ABに直交する左向きの反力Pがあるので、部材ABの曲げモーメントには勾配があります。
これに対し、E点はローラー支持なので部材DEに直交する水平反力はなく、曲げモーメントは0になっています。

この時点で部材DEに曲げモーメントが生じている選択肢の「3」と「4」は誤りで、「1」か「2」の2択に絞られるのね。
手順③:一箇所だけ曲げモーメントを求める
選択肢が2つに絞られたので、最後に一箇所だけ曲げモーメントを求めます。
公式を覚えておくだけですぐに求められるB点の曲げモーメントを求めます。
- A点の水平方向支点反力がP
- 部材ABの長さが2l
より、B点の曲げモーメントはP × 2l = 2Pl になります。
ということで、正解は「1」です。
この問題に関して言えば、この解き方をすると正解に辿り着くまでの所要時間は3分くらいです。
公式が頭に入っていない人は、以前「覚えるべき公式13選」という記事でまとめているので、そちらもご覧ください。
まとめ

今回は、3年に2回ほどのペースで出題される「正しい曲げモーメント図を求める問題」について解説しました。
構造力学の基本知識があれば解ける問題なので、確実に得点できるように数年分解いておきましょう。
また曲げモーメントの概形を瞬時に求めるトレーニングは、構造設計者としてのセンスを磨くのに最適だと思います。
私が大学院入試の勉強をしているときに使っていた『構造力学徹底演習 基礎から応用まで243問』という参考書は、曲げモーメントの概形を求める問題がたくさん載っており、非常にオススメです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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