設計製図試験対策で身につけるべき3つの力について【優先順位とその理由も解説】

一級建築士 独学 一級建築士試験

こんにちは、トライです。

7/11(日)に令和3年度の一級建築士の学科試験が行われました。

まずは学科試験を受けた皆さま、本当にお疲れ様でした。

合格推定点以上の人はわずか1週間の休息の後、設計製図試験対策に臨むことになります。

設計製図試験までわずか2ヶ月半の短期決戦ですが、はっきりいって

学科試験の勉強が楽だったと思うくらい地獄の日々です。

そんな地獄の設計製図対策に臨む人の不安を少しでも取り除くために、この記事では私の経験をふまえ、これからのスケジュールと本試験に向けて身につけるべき3つの力について解説します。

この記事はこんな人にオススメ
  • 設計製図試験本番までどんなスケジュールで進んでいくのか知りたい。
  • 設計製図試験がとにかく不安。具体的な対策方法について知りたい。

約9ヶ月間、必死に学科の勉強をして、休む間もなく設計製図試験対策なんて、大変な試験だよね。

トライ
トライ

本当に大変だし不安ばかりだと思うから、今後の流れと私の経験から得られた対策方法を知って心の準備をしておこう。

各資格学校の学科試験の総評まとめ

まず初めに各資格学校の学科試験の総評と設計製図試験対策に入る点数について確認しておきます。

今年は「Ⅰ.建築計画」が過去最高レベルで難しかったようですね。

例年、20点満点の科目は11点以上取れていないと足切りになりますが、今年は10点以上取れていれば設計製図試験に進めそうです。

各学校の合格推定点は概ね85点から87点のようです。

資格学校によって違いがありますが、85点以上の人は設計製図対策講座に進める可能性があるので、通う予定の資格学校に確認しましょう。

各資格学校が出した「設計製図推奨点」を以下にまとめました。( )内は各教科の必要最低点です。

【総合資格学院】

設計製図推奨点 85点(計画9点/環境・設備11点/法規16点/構造16点/施工13点)

【日建学院】

設計製図推奨点 86点(計画10点/環境・設備11点/法規16点/構造16点/施工13点)

【資格のTAC】

設計製図推奨点 86点(計画10点/環境・設備11点/法規16点/構造16点/施工 13点)

「設計製図推奨点」とは、

「自己採点結果がこの点数以上の人は製図対策講座に参加できます。」

という点数です。

また、正式な学科試験の合格点は9/7(火)に発表されます。

もし資格学校の設計製図推奨点合格点だった場合、それまで製図対策講座に参加していたとしても設計製図試験には進めません。

このような場合、設計製図対策講座に支払っていた受講料は、入学金等を除き、基本的には返ってきます

受講料はほぼ返ってくるにも関わらず、9/7(火)まで通っていた際に得たスキルは確実に身についているので、設計製図推奨点以上の人は利用しない手はありません。

設計製図対策講座のスケジュール

設計製図対策は対策期間が短い分、急ピッチで対策する必要があり、休日は朝から晩まで資格学校で講義を聞いたり線を引いたりします。

おそらく合格者に

「学科対策と製図対策、どちらが大変だった?」と聞くと、ほとんどの人が

「製図対策の方が圧倒的に大変だった。」と答えるでしょう。

実際かなり大変なので覚悟しておきましょう。

ただ、頑張っても頑張らなくても2ヶ月半で地獄から解放されます。

来年度も地獄を経験しなくてもいいように、この2ヶ月半だけは残業は極力せずに、設計製図のことを最優先に日々を過ごしましょう。

今年は土日コースの人は7/17(土)か7/18(日)から、ハウスメーカー勤務で火・水休みの人は7/21(水)からスタートの人が多いと思います。

資格学校にもよりますが、「10回程度の設計製図対策講座+特別対策講座」を受講することになります。

ネタバレにはなりますが、初回授業はいきなり夜10時過ぎまで行われました。

トライ
トライ

正直な話、1回目の授業終わりで心が折れかけました。

本試験までに身につけるべき3つの力と優先順位

本試験までに身につけるべき3つの力とは、

  • エスキス力(計画力)
  • 計画の要点記述力
  • 作図力(作図スピード)

この3つです。(本試験での作業順に並べています。)

これを「身につける優先順位」=「早いうちに身につけておくべき順番」に並べ直すと、

  • 優先度1位:作図力(作図スピード)
  • 優先度2位:計画の要点記述力
  • 優先度3位:エスキス力(計画力)

という順番になります。

優先度1位:作図力(作図スピード)

早いうちに身につけるべき力の第1位は間違いなく「作図力(作図スピード)」です。

その理由は以下の4つです。

作図力を最優先で身に着けるべき理由
  • 要求図面が1枚でも未完成だとランクⅣ=失格となってしまうから
  • エスキス、計画の要点記述、見直しの時間を多く確保できるから
  • 訓練すれば安定して所要時間を短縮できるから
  • 毎週の宿題に費やす時間を短縮できるから

設計製図試験の合格基準

ランクⅣって何?

そもそも製図試験の採点基準ってどうなっているの?

トライ
トライ

具体的な採点基準は残念ながら公表されていません。

ですが、自身の図面の採点結果(ランク)だけは知ることが出来ます。

設計製図試験の結果はその出来によってランクⅠからランクⅣまでに分類されます。

令和2年度の設計製図試験の採点結果は以下のようになっています。( )内の数値は総受験者数に対する割合を表します。

  • ランクⅠ(34.4%):「知識及び技能」を有するもの【ランクⅠのみ合格】
  • ランクⅡ(5.6%):「知識及び技能」が不足しているもの
  • ランクⅢ(24.3%):「知識及び技能」が著しく不足しているもの
  • ランクⅣ(35.7%)設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの

※「知識及び技能」とは、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいう。

本試験では「ランクⅠ」のみ合格で、「ランクⅡ~Ⅳ」はすべて不合格です。

各ランクの割合を見てみると、「ランクⅣ」が全体の35.7%と最も多くなっています。

つまり「設計条件及び要求図書に対する重大な不適合」に該当する人が本当にたくさんいるということです。

前半の「設計条件に対する重大な不適合」は具体的には以下のような不適合です。

「設計条件に対する重大な不適合」の具体例
  • 設計条件に関する基礎的な不適合:「各ユニットのゾーニング等が不適切」、「要求している室の欠落」、「要求している主要な室等の床面積の不適合」等
  • 法令への重大な不適合:「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、「道路高さ制限」や「直通階段に至る重複区間の長さ」等

引用元:総合資格学院「令和2年度 一級建築士設計製図試験 合格速報」

後半の「要求図面に対する不適合」は、「要求された図面が未完成」ということです。

作図力(作図スピード)がないと、この「要求された図面が未完成」という結果に終わる可能性が高くなってしまいます。

また、製図対策講座も後半になると、講義時間内にエスキス(いわゆるゾーニング)、要点記述、作図までを通しで実施し、その後、解説まで行います。

作図力(作図スピード)がないと、せっかくの通しの演習を制限時間内にやりきることができず、学習効率が落ちてしまいます。

「要求図面に対する不適合」にならないためにも、作図力(作図スピード)を最優先で身につけましょう。

本試験の時間配分

では本試験の時間配分はどのように設定すればよいのでしょうか。

個人差はありますが、おおよそ以下のようになるのではないでしょうか。

設計製図試験の時間配分例
  • エスキス(ゾーニング):2時間
  • 計画の要点記述:1時間
  • 作図:3時間
  • チェック、まとめ:30分

 合計:6時間30分

自分の作図スピードが速いか遅いかは「作図が3時間以内に終わるか」で判断しましょう。

3時間で終わらない人は、まずは速く書く練習を積みましょう。

訓練次第で唯一時間配分を短縮できる(短縮してもよい)のが「作図」の時間です。

そのため、資格学校では作図時間を3時間→2.5時間にすることを目的に「作図力強化講座」的なものが用意されます。

私は学科試験と同様、「速く書く練習は自分でできる」と判断し、申し込みませんでした。

トライ
トライ

後に受講した知人の話では「時間を計ってひたすら書きまくる」という内容だったそうで、個人的には受講する必要はないと思います。

ただ実際は図面への補足説明をガンガン追加していくことになるので、結果的に作図時間は3時間に落ち着きます。

トライ
トライ

図面への補足説明については詳しくは後半で解説します。

優先度2位:計画の要点記述力(+建築設備に関する知識)

早いうちに身につけるべき力の第2位は「計画の要点記述力」です。

A3用紙1枚に6問程度、自身の建築計画について工夫したことを記述していきます。

計画の要点記述の重要性は年々高まってきているように感じます。

私が編み出した要点記述の攻略法はこの3つです。

要点記述がどうしてもうまくいかない人は参考にしてみて下さい。

トライ式「計画の要点記述」の攻略法
  • 資格学校から配布される「記述例」を暗記する。
  • 記述例が成立するエスキス(ゾーニング)のパターンを用意しておく。
  • 建築設備に関する最低限の知識は頭に入れておく。

資格学校から配布される「記述例」を暗記する

まずは資格学校から配布される記述例を暗記してしまいましょう。

要点記述にはある程度決まった解答パターン、いわゆる「型」が存在します。

本番ではオリジナルの文章を1から考える時間はありません。

型をベースに、特にアピールできる点がある場合はオリジナルの文章を追加する

というスタンスが最もコスパが良く、確実だと思います。

記述例が成立するエスキス(ゾーニング)のパターンを用意しておく

トライ
トライ

エスキスは何とか終わったけど、覚えた記述例とエスキス内容が一致してないな。

計画の要点記述の文章を1から考えないと…。

私は当時、このような事態に何回か陥りました。

このような事態に陥らないためにも、私が取った手法としては、

「記述でこういうことを書くために、エスキスには必ずこの配置パターンを盛り込む」

という方法です。

私は試験が始まったら問題文の確認と線引き後、

エスキスに入る前に、計画の要点記述の内容を確認しました。

暗記した要点記述例の中から、本試験で採用する内容をあらかじめピックアップしておき、それをひとつの手がかりに(それが成立するように)エスキスを進めました。

トライ
トライ

あくまで私が製図の勉強をする中で導き出した手法です。

資格学校の先生にこれを言うと「そんな解き方はダメ」と言われるかもしれません。

建築設備に関する最低限の知識は頭に入れておく

計画の要点記述で必ず1問は出題されるのが「建築設備に関する記述」です。

実際に昨年度の設計製図試験の課題文を見てみましょう。

建築技術教育普及センターより引用

このうち「建築物の計画に当たっての留意事項」の以下の内容

  • 省エネルギーに配慮して計画する。
  • 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降設備等を適切に計画する。

これらは建築設備に関する知識が必須となります。

先ほど紹介した記述例を暗記することである程度は知識を得ることができますが、きちんと理解するためにも設計製図のテキストに記載されている建築設備の内容は一度読んでおきましょう。

優先度3位:エスキス力

早いうちに身につけるべき力の第3位はエスキス力、いわゆる計画の根幹を成す部分です。

具体的には要求される室や駐車場などをゾーニングする作業です。

個人的には、このゾーニングの作業が最も苦手で非常に苦労しました。

私は本試験の1週間前くらいになってようやく制限時間以内にそれなりのエスキスができるようになりました。

それまでは毎回時間内にプランが決まらず、

「作図しながらゾーニングしながら…」

という悪い取り組み方をしていました。

ゾーニングしながら作図するのは絶対にNGです。

作図スピードが格段に落ちるだけでなく、途中でゾーニングの変更が出来なくなり、計画が成立しなくなる危険性があります。

ゾーニングの段階で細かいところまですべて決定している必要はないですが、要求された室の配置だけはすべて完了した状態で計画の要点記述・作図に移行しましょう。

エスキス力は最後の最後まで伸びるなので、前日まで諦めずに今まで解いた課題を使って練習をしましょう。

ランクⅠを勝ち取るために認識しておくべき3つのこと

結局、ランクⅠを勝ち取るためにはどうすればいいの?

という問いに対し、私の経験から導いた答えを示して終わりとします。

要求事項・図面に重大な不適合があると自動的にランクⅣになるため、それらはクリアしている前提で、ランクⅠを勝ち取るために認識しておくべきことは以下の3つです。

ランクⅠを勝ち取るために認識しておくべきこと
  • 建築計画は破綻していなければOK
  • 要点記述は暗記した記述例通りでOK
  • 図面には補足説明(採点者へのアピール)を時間ギリギリまで書く

建築計画は破綻していなければOK

一級建築士の製図試験は学生自体の設計課題とは違い、

「素晴らしい建築計画」=「合格」ではありません。

どんなに素晴らしい計画でも、少しでも違反事項があればランクⅣです。

建築計画は「破綻していなければOK」と認識しておきましょう。

計画の要点記述がしっかり書けている

「しっかり書けている」とは「資格学校から配布された記述例通りに書けている」という意味です。

資格学校がせっかく用意してくれた素晴らしい記述例なのでしっかり暗記しておきましょう。

図面への補足説明が充実している

製図試験の採点者はひとりで一日に何枚も似たような図面を採点することになります。

明確な採点基準は公表されていませんが、受験者のほとんどが3~5種類程度の資格学校に通っているため、どれも似通ったプランになることは必然です。

ではどこで差をつけるのかというと、図面への補足説明の書き込みです。

図面への補足説明を充実させ、採点者へ自身の計画の素晴らしさをアピールすることが重要になります。

個人的には、「破綻していない建築計画」、「計画の要点記述」で差がつかなければ、最後はこの「図面への補足説明の書き込み」で合否が決まると考えています。

この時間を確保するためにも、作図スピードは早いうちに身につけておきましょう。

まとめ

今回は設計製図試験までの流れと身につけるべき力とその優先順位について解説しました。

今回の記事の要点をまとめると以下のようになります。

今回の記事の要点
  • 自己採点結果が85点以上の人は設計製図対策を開始する。
  • 「作図力→計画の要点記述力→エスキス力」の順に身につける。
  • 建築計画は破綻していなければOK
  • 計画の要点記述は暗記した記述例通りでOK
  • 図面には補足説明(採点者へのアピール)を時間ギリギリまで書く

繰り返しになりますが、泣いても笑っても2ヶ月半の勝負です。

来年度も同じ苦しみを経験しなくて済むように、製図試験の勉強を最優先に日々を過ごしましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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