明日から12月になり、資格学校では一級建築士対策講座が始まる頃かと思います。
学科試験の学科Ⅳ:建築構造は建築法規と同様、配点が30点と最も高く、合格するためには攻略必須の科目です。
30点のうち、最初の6-7問はいわゆる「構造力学」に関する問題が出題されます。

学生のころから構造力学って苦手だったんだよね。構造力学は捨てて他で得点すればいいや。

その考えは危険だよ!構造力学で確実に得点しないと合格は難しいです!

構造力学は解き方を理解すれば安定して得点できる「理解型」の問題なので、必ずものにしましょう。
というわけで、今回から「構造力学徹底対策」と題して、本試験で出題された構造力学の問題を徹底解説していきます。
- 構造力学を得点源にしたい人
- 学生の頃から構造力学が苦手だった人
- 一級建築士試験の受験を控えている人
- 構造力学の効率的な勉強方法が知りたい人
まずは敵を知る

はじめに過去の本試験をもとに出題傾向を分析します。
そもそもなぜ分析が必要なのか、と思った人もいるかもしれません。
B.C.500年頃の中国春秋時代の兵法書『孫子』の最も有名な教訓の一つとして、
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
という言葉があります。
「敵情を知って味方の事情も知っていれば、百回戦っても危険が無い」という意味です。
これを一級建築士試験に置き換えると、ただ闇雲にテキストの全範囲を覚えようとするのではなく、
「毎年出題されている問題」や「出題頻度が高い問題」さえ対策すれば問題ないということになります。
そこで次の章では、過去9年分の本試験を対象に、出題頻度の高い問題を具体的に紐解いていきます。
過去9年間の本試験の分析結果

早速ですが、過去9年間の本試験の構造力学の出題傾向と優先度を分野別にまとめると、以下の表のようになります。
分野 & 年度 | 軸力と曲げ を受ける 柱の応力 | 梁のたわみ・ 断面二次 モーメント | 不静定 次数 | 全塑性 モーメント | ラーメン 架構の 各応力 | トラス の軸力 | 曲げ 応力図 | 柱の 座屈 耐力 | 柱の せん断力 分布 | 固有 周期 | 転倒・ 摩擦 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R3 | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | × |
R2 | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ | × | × |
R1 | × | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | × | × |
H30 | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ | × | × | × | ○ |
H29 | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
H28 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × | × | ○ | × |
H27 | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | ○ |
H26 | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × |
H25 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
優先度 | B | A | D | A | C | A | B | C | C | C | C |
優先度A:毎年必ず出題されている問題
毎年必ず出題されている問題、つまり最も優先度の高い問題(優先度A)は以下の3種類となりました。
優先度Aの問題
- 梁のたわみ、断面二次モーメントを求める問題
- トラスの軸力を求める問題
- 全塑性モーメントに関する問題



これらは毎年必ず出題されるだけでなく、難易度としても高くないため、毎回確実に得点しなければなりません。
優先度B:過去9年間で6回出題されている問題
次に、過去9年間で6回、つまり3年に2回の高頻度で出題されている、優先度の高い問題(優先度B)は以下の2種類です。
優先度Bの問題
- 軸力と曲げを受ける柱の応力に関する問題
- 正しい曲げモーメント図を選ぶ問題


これらも高頻度で出題されるだけでなく、難易度も高くないため、確実に得点したい問題です。
優先度C:過去9年間で2, 3回出題されている問題
次に、過去9年間で2, 3回、つまり3, 4年に1回の頻度で出題され、優先度としては普通の問題(優先度C)は以下の5種類です。
優先度Cの問題
- 柱のせん断力分布を求める問題
- 建物の固有周期を求める問題
- ラーメン架構の各応力を求める問題
- 柱の座屈耐力を求める問題
- 摩擦や転倒モーメントに関する問題
この中で、
- 建物の固有周期を求める問題
- 柱の座屈耐力を求める問題
この2つは公式さえ頭に入ってさえいれば正解できるため、確実に得点しておきたい問題です。


他の3種類については、構造力学に苦手意識のある人にとっては、

毎回正解できないし、解説を読んでもよく分からないんだよな~。あぁ、構造力学嫌い…。
といった印象を持ちやすい、やや難易度の高い問題です。
本ブログでは今後、構造力学が苦手な人向けに、これらすべての分野をひとつずつ丁寧に解説していきます。
優先度D:過去9年間で1度だけ出題されている問題
最後に、過去9年間で1度だけ出題された、優先度としては低い問題(優先度D)は以下の通りです。
優先度Dの問題
- 架構の静定、不静定に関する問題

この問題は、出題頻度こそ低いものの、公式さえ頭に入っていれば確実に正解できる問題です。
なので、まずは公式を正しく覚え、問題集や過去問で軽く演習しておけば問題ありません。
まとめ:過去の出題傾向を分析し、優先度の高い問題を対策しよう

今回は一級建築士の学科Ⅳ:建築構造の中の「構造力学」の出題傾向を分析しました。
こうやって分析してみると、ほぼ毎年出題されている問題もあれば、3年に1回くらいしか出題されていない問題もあるということが分かったかと思います。
冒頭でも述べましたが、一級建築士試験対策としては、構造力学の全てを理解する必要はありません。
試験によく出る分野に絞って対策すればよいのです。
私は学科試験は独学で突破したため、大手資格学校でこのような分析結果を受講生に伝えているのかは分かりませんが、
このような分析によって「敵を知る」ことはとても重要です。
この分析結果を受けて、本ブログでは出題頻度の高い問題から順に解説していきます。
学生の頃から構造力学が苦手だった人向けに、とにかく丁寧な解説でお届けしたいと思います。
今後公開する記事が少しでも、令和4年度(2022年度)に一級建築士試験を受験する人の役に立てるように解説記事を作成していきますので、ぜひ次回もご覧いただけると幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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