今回は一級建築士の学科試験Ⅳ:構造力学に毎年必ず出題させる「静定トラスの軸力を求める問題」について解説します。
静定トラスの解き方をマスターしたい人、一級建築士試験を独学で受験予定の人は必見の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
- 節点法による静定トラスの解き方
- 切断法による静定トラスの解き方
- 節点法と切断法、どちらで解くのが良いのか
静定トラスの2つの解き方
静定トラスの軸力を求めるには、以下の2つの方法があります。
- 節点法(せってんほう)
- 切断法(せつだんほう)
それぞれのメリット、デメリットを簡単に解説します。
方法①:節点法
節点法とは、支点の反力を求めた後、節点まわりの力のつり合い式から軸力を求める方法です。
最も基本的で確実な解き方ですが、問題によっては解くのにやや時間が掛かります。

方法②:切断法
切断法とは、支点の反力を求めた後、求めたい部材を含めた切断面の力のつり合い式から軸力を求める方法です。
節点法に比べ、解き方を理解するには少し慣れが必要ですが、慣れてさえしまえば求めたい部材の軸力を直接求められるため、解く時間を短縮できます。

過去問で2つの解き方を比較
ここからは実際に平成29年度の本試験を節点法、切断法それぞれの方法で解いていきます。

節点法による解法
手順1:支点の反力を求める
まず初めに支点の反力を求めます。
説明しやすいように、以下のように節点に符号を振っておきます。

節点Cはピン支持なので、支点の反力としては、
- 水平方向(X方向)の反力 HC
- 鉛直方向(Y方向)の反力 VC
の2種類が存在します。
一方、節点Dはローラー支持なので、支点の反力としては、鉛直方向(Y方向)の反力 VD の1つのみです。
支点の反力を求めるためには
- X方向の力のつり合い式
- Y方向の力のつり合い式
- 曲げモーメントのつり合い式
以上の3つのつり合い式を使って求めます。
以上を踏まえるとX方向の力のつり合い式は以下のようになります。
【X方向の力のつり合い式】
HC = 0

X方向の荷重が存在しないため、結果的にHCは0となります。
続いてY方向の力のつり合い式ですが、
- 節点Cの鉛直方向反力 VC
- 節点Dの鉛直方向反力 VD
- 鉛直方向の荷重P, 2P, P
これらの力がつり合うということで、Y方向の力のつり合い式は以下のようになります。
【Y方向の力のつり合い式】
VC + VD – P – 2P – P = 0
最後に、曲げモーメントのつり合い式を考えます。
今回は、節点Cまわりの曲げモーメントのつり合い式を考えます。
【節点Cまわりの曲げモーメントのつり合い式】
P・l + 2P・2l + P・3l – VD・4l = 0
⇔ 8P・l = 4VD・l
⇔ VD = 2P
こうして求まったVD = 2P をY方向のつり合い式に代入して VC を求めます。
VC + 2P – P – 2P – P = 0
⇔ VC = 2P
以上で反力が求まったので、いよいよ節点法を実施していきます。
手順②:各節点回りの力のつり合い式を解く
ここからは各節点まわりの力のつり合い式から部材の軸力を求めていきますが、1点だけ注意点があります。
それは「未知数が2つ以下の節点で力のつり合い式を解く」ということです。

節点まわりの力のつり合い式は「X方向」と「Y方向」の2つなので、未知数も2つ以下でないと解くことができないと理解しておきましょう。
節点Cまわりの力のつり合い式
節点Cは取り合う部材数が2本なので、力のつり合い式から軸力を求めることができます。

【X方向の力のつり合い式】
NCF = 0
【Y方向の力のつり合い式】
NCE + 2P = 0
⇔ NCE = -2P
節点Eまわりの力のつり合い式
次に、節点Eまわりの力のつり合いを考えます。
節点Eは取り合う部材数は3本ですが、NCE の軸力は先ほど求めた(NCE = -2P)ので、未知数としては2つとなり、つり合い式を解くことができます。

【X方向の力のつり合い式】
NAE + NEF/√2 = 0
【Y方向の力のつり合い式】
2P – NEF/√2 = 0
⇔ NEF = 2√2P
これをX方向の力のつり合い式に代入すると
NAE + 2√2P / √2 = 0
⇔ NAE = -2P
節点Fまわりの力のつり合い式
続いて節点Fまわりの力のつり合いを考えます。
節点Fは取り合う部材数は4本ですが、NCF, NEF の軸力は求まっている(NCF = 0, NEF = 2√2P)ので、未知数としては2つです。

【X方向の力のつり合い式】
0 – 2√2P・1/√2 + NBF = 0
⇔ NBF = 2P
【Y方向の力のつり合い式】
2√2P・1/√2 + NAF = 0
⇔ NAF = -2P
節点Aまわりの力のつり合い式
最後に、節点Aまわりの力のつり合いから、設問で問われている部材ABの軸力を求めます。

【X方向の力のつり合い式】
NAG + NAB/√2 + 2P = 0
【Y方向の力のつり合い式】
-NAB/√2 – P + 2P = 0
⇔ NAB = √2P
この時点で設問としては終了ですが、せっかくなので NAG も求めておきます。
NAB = √2P をX方向の力のつり合い式に代入すると、
NAG + P + 2P = 0
⇔ NAG = -3P
以上で節点法による解法は終了です。
ここまで読んでいただいた方の中には

答えにたどり着くまで長いな…
と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
今回、反力を求めるところからカウントすると、答えを求めるまでに力のつり合い式を5回解かなければなりませんでした。
今回の問題のように、節点法は「静定トラスの中央付近の部材」つまり「支点から遠い部材」の軸力を求める場合にはあまり向いていません。
逆に言うと、今回のような問題に対しては、次に解説する切断法が向いています。
切断法による解法
ここからは先ほど節点法で解いた問題を切断法で解いていきます。
手順①:支点の反力を求める
先ほどの節点法と同様、まず初めに支点の反力を求めます。
支点の反力については先ほど求めた結果 VC = 2P, VD = 2P を使います。
手順②:切断面での力のつり合い式
切断法は冒頭でも述べたように「支点の反力を求めた後、軸力を求めたい部材を含む切断面での力のつり合い式を解く」ことで軸力を求める解法です。
今回でいうと、部材ABを含む切断面での力のつり合いを解くことになります。
また、切断法は支点の反力を求めるときと同様、
- X方向の力のつり合い式
- Y方向の力のつり合い式
- 曲げモーメントのつり合い式
以上の3つのつり合い式を使って解くため、未知数が3つ以下となる面で切断しなければならない点に注意して下さい。
それでは実際に、部材ABを含む切断面として、以下の面で切断してみます。

上記の面で切断した場合、未知数としては、
- NAG
- NAB
- NBF
の3つなので、力のつり合い式から上記3つの軸力を求められることが分かります。
【X方向の力のつり合い式】
NAG + NAB/√2 + NBF = 0
【Y方向の力のつり合い式】
-NAB/√2 + 2P – P = 0
⇔ NAB = √2P
【節点Cまわりの曲げモーメントのつり合い式】
NAG・l + NAB・√2l + P・l = 0
先ほど求めたNAB = √2Pを代入すると
NAG・l + 2Pl + Pl = 0
⇔ NAG = -3P
以上で切断法による解法は終了です。
切断法の場合、反力を求めるところからカウントすると、力のつり合い式を解いた回数はたったの2回でした。

切断法で慣れが必要な点としては、曲げモーメント「力×距離」の「距離」の部分です。今回の場合、力NABの節点Cからの距離(垂直距離)は√(l2 + l2) = √2lとなります。
節点法と切断法、結局どっちで解けばいいのか
ここまで説明してきたように、静定トラスの軸力を求めるには節点法と切断法の2つの方法があります。

節点法と切断法、結局どっちで解けばいいの?
という疑問に対する私の答えは、
「節点法と切断法の両方で解いて検算し、確実に得点する」
です。
節点法で求めた答えと切断法で求めた答えが一致すれば、その問題は確実に正解できています。
また学科Ⅳの建築構造は、学科Ⅴ(建築施工)と合わせて試験時間が2時間45分なので、確実に時間が余ります。
そのため、節点法と切断法の両方で解いて検算する時間は十分に確保できます。
また検算時の注意点として、検算は必ず支点の反力の計算から行うようにしてください。
なぜなら、支点の反力の計算が間違っていると、仮に節点法と切断法の答えが一致したとしてもどちらも間違いとなってしまうためです。

検算が必要なのは分かったし、検算はするけど、最初にどっちの方法で解くのがいいのか教えてよ。
という方に対する私の答えは以下の通りです。
「軸力を求める部材が支点に近ければ節点法、支点から遠ければ切断法で解く」
理由は先ほど2つの方法で解いて分かったと思いますが、軸力を求める部材が支点から遠ければ遠いほど節点法は解くのに時間が掛かるからです。
まとめ
今回は学科Ⅳ(建築構造)の構造力学で毎年必ず出題されている問題「静定トラスの軸力を求める問題」について、節点法と切断法の2つの解法を解説しました。
本記事の内容をまとめると以下のようになります。
- 節点法は、最も基本的な解き方だが、軸力を求める部材が支点から遠いと解くのに時間が掛かる。
- 切断法は、節点法に比べて慣れが必要だが、節点法よりも解く時間を短縮できる。
- 軸力を求める部材が支点に近ければ節点法、支点から遠ければ切断法で解くのがオススメ。
- 試験時間には余裕があるので、節点法と切断法それぞれで解いて検算し、確実に得点する。
静定トラスの軸力を求める問題は、合格者のほとんどが確実に得点してくる問題です。
過去問が問題なく解けるようになれば本番も得点できるレベルに仕上がりますので、間違えた問題は繰り返し練習し、得点源にしましょう。
もし過去問だけでは不安だという人は、以下の教材がオススメです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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