こんにちは、トライです。
今回は平面トラスの有限要素解析(有限要素法、以下FEM)の1回目として、FEMの基本的なフローと要素剛性行列の算出方法を解説します。
FEMは機械分野、建築分野の構造解析の基本となる解析方法です。
平面トラスはFEMの基本理論を理解するのに最適な構造です。
本ブログでのプログラミング記事のモットーである
とにかくとっかりやすく、分かりやすい解説
でお送りするので、基本理論を理解したい人はぜひお読み下さい。
平面トラスのFEMのフローについて

上の図のように、節点 i と節点 j から構成されるトラス要素について考えます。
図中に表記されている各記号の意味は以下の通りです。
- ヤング係数 E
- 断面積 A
- 部材長さ L
- 要素座標系 x, y(材軸方向が x 軸, 材軸と直交方向が y 軸)
- 全体座標系 X, Y
- 要素座標系と全体座標系の成す角度 θ
平面トラスのFEMのフローは簡単にまとめると以下のようになります。
- 各部材の要素座標系における要素剛性行列を算出する
- 各部材の全体座標系における要素剛性行列を算出する【座標変換】
- 架構の全体剛性行列を算出する【アセンブル】
- 剛性方程式を解き、荷重に対する変形を算出する
- 変形から各部材の応力(軸力)を求める
すべてを1つの記事にまとめると膨大な量になるので、今回の記事では
- 各部材の要素座標系における要素剛性行列を算出する
- 各部材の全体座標系における要素剛性行列を算出する【座標変換】
について解説します。
要素座標系における要素剛性行列

平面(二次元)トラスを考える前に、更に簡単な一次元トラスで考えます。
今回扱うようなピン接合のトラス架構は力学的には、
部材に曲げ応力やせん断応力は発生せず、軸力のみで外力に抵抗する架構
です。
つまり、曲げ剛性やせん断剛性はなく、軸剛性のみを持つ架構ということです。
よって、材軸方向のみの一次元トラス部材の剛性行列 kbar は以下のように表されます。

これを剛性方程式 { f } = [ k ] { u } に当てはめると以下のようになります。

※ { } 表記はベクトル、[ ] 表記は行列を意味しています。
※ { f } は荷重ベクトル、[ k ] は剛性行列、{ u } は変位ベクトル
これが平面(二次元)トラスになると材軸方向(x 方向)だけでなく、材軸と直交方向(y 方向)成分も出てくるので、要素座標系における剛性行列は以下の式になります。

また、要素座標系における剛性方程式は以下のようになります。

トラス部材自体の変形は材軸方向の伸び縮みのみで、材軸と直交方向の変形(曲げ変形やせん断変形)は生じません。
そのため、uiy や ujy の係数となる行列の2行目と4行目、2列目と4列目はすべて0になります。
全体座標系における要素剛性行列【座標変換】

次に、先ほど求めた「要素座標系における要素剛性行列」を「全体座標系における要素剛性行列」に変換します。
どういうことか分かりやすくするために、例として以下の架構を見てみましょう。

この場合、
- 節点1と節点2から成る部材の要素座標軸(材軸)の向きは右向き
- 節点2と節点3から成る部材の要素座標軸の向きは左上向き
- 節点1と節点3から成る部材の要素座標軸の向きは右上向き
となり、部材ごとに座標軸の向きがすべて異なります。
架構全体の剛性行列を算出する際に、各部材の座標軸の向き、つまり各部材の剛性行列の算出ルールがバラバラなまま単純に足し合わせることはできません。
そのため、各部材の剛性行列を架構全体の座標系(=共通の座標系)で計算し直す必要があります。
この作業を座標変換と言います。
座標変換をするためには、座標変換行列 T を用います。
座標変換行列は、高校数学Cの行列という単元で勉強する回転行列から求められます。
ちなみに高校数学Cで習う回転行列は以下のような行列です。

この θ に -θ を代入すると、一次元トラスの座標変換行列 T が求まります。

平面(二次元)トラスの座標変換行列 T は以下のようになります。

この座標変換行列 T を用いて、要素座標系の剛性方程式を全体座標系に変換します。
詳細説明は割愛します。式だけ以下に示しておきます。

以上より、全体座標系における要素剛性行列は以下のようになります。

となります。お疲れ様でした。
まとめ:要素剛性行列は全体座標系で算出する

今回はFEMの基本的なフローと平面トラスの要素剛性行列の算出方法について解説しました。
この記事では、ある程度の理論を解説しましたが、ほどほどに理解してもらった後は、全体座標系における要素剛性行列の式
↓

これだけ理解すればOKです。
次回は、各部材の要素剛性行列を接合(アセンブル)し、架構の全体剛性行列を作成する方法から、架構の応力(軸力)、変形を求めるまでを解説します。
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