平面トラスの有限要素解析①【要素剛性行列の算出】

プログラミング MATLAB 有限要素法 プログラミング

こんにちは、トライです。

今回は平面トラスの有限要素解析(有限要素法、以下FEM)の1回目として、FEMの基本的なフローと要素剛性行列の算出方法を解説します。

FEMは機械分野、建築分野の構造解析の基本となる解析方法です。

平面トラスはFEMの基本理論を理解するのに最適な構造です。

本ブログでのプログラミング記事のモットーである

とにかくとっかりやすく、分かりやすい解説

でお送りするので、基本理論を理解したい人はぜひお読み下さい。

平面トラスのFEMのフローについて

MATLAB 有限要素法 トラス

上の図のように、節点 i と節点 j から構成されるトラス要素について考えます。

図中に表記されている各記号の意味は以下の通りです。

  • ヤング係数 E
  • 断面積 A
  • 部材長さ L
  • 要素座標系 x, y(材軸方向が x 軸, 材軸と直交方向が y 軸)
  • 全体座標系 X, Y
  • 要素座標系と全体座標系の成す角度 θ

平面トラスのFEMのフローは簡単にまとめると以下のようになります。

  1. 各部材の要素座標系における要素剛性行列を算出する
  2. 各部材の全体座標系における要素剛性行列を算出する【座標変換】
  3. 架構の全体剛性行列を算出する【アセンブル】
  4. 剛性方程式を解き、荷重に対する変形を算出する
  5. 変形から各部材の応力(軸力)を求める

すべてを1つの記事にまとめると膨大な量になるので、今回の記事では

  1. 各部材の要素座標系における要素剛性行列を算出する
  2. 各部材の全体座標系における要素剛性行列を算出する【座標変換】

について解説します。

要素座標系における要素剛性行列

平面(二次元)トラスを考える前に、更に簡単な一次元トラスで考えます。

今回扱うようなピン接合のトラス架構は力学的には、

部材に曲げ応力やせん断応力は発生せず、軸力のみで外力に抵抗する架構

です。

つまり、曲げ剛性やせん断剛性はなく、軸剛性のみを持つ架構ということです。

よって、材軸方向のみの一次元トラス部材の剛性行列 kbar は以下のように表されます。

MATLAB 有限要素法 トラス

これを剛性方程式 { f } = [ k ] { u } に当てはめると以下のようになります。

プログラミング MATLAB 有限要素法

※ { } 表記はベクトル、[ ] 表記は行列を意味しています。

※ { f } は荷重ベクトル、[ k ] は剛性行列、{ u } は変位ベクトル

これが平面(二次元)トラスになると材軸方向(x 方向)だけでなく、材軸と直交方向(y 方向)成分も出てくるので、要素座標系における剛性行列は以下の式になります。

MATLAB 有限要素法 トラス

また、要素座標系における剛性方程式は以下のようになります。

プログラミング MATLAB 有限要素法

トラス部材自体の変形は材軸方向の伸び縮みのみで、材軸と直交方向の変形(曲げ変形やせん断変形)は生じません。

そのため、uiy や ujy の係数となる行列の2行目と4行目、2列目と4列目はすべて0になります。

全体座標系における要素剛性行列【座標変換】

次に、先ほど求めた「要素座標系における要素剛性行列」を「全体座標系における要素剛性行列」に変換します。

どういうことか分かりやすくするために、例として以下の架構を見てみましょう。

MATLAB 有限要素法 トラス

この場合、

  • 節点1と節点2から成る部材の要素座標軸(材軸)の向きは右向き
  • 節点2と節点3から成る部材の要素座標軸の向きは左上向き
  • 節点1と節点3から成る部材の要素座標軸の向きは右上向き

となり、部材ごとに座標軸の向きがすべて異なります。

架構全体の剛性行列を算出する際に、各部材の座標軸の向き、つまり各部材の剛性行列の算出ルールがバラバラなまま単純に足し合わせることはできません。

そのため、各部材の剛性行列を架構全体の座標系(=共通の座標系)で計算し直す必要があります。

この作業を座標変換と言います。

座標変換をするためには、座標変換行列 T を用います。

座標変換行列は、高校数学Cの行列という単元で勉強する回転行列から求められます。

ちなみに高校数学Cで習う回転行列は以下のような行列です。

プログラミング MATLAB 有限要素法

この θ に -θ を代入すると、一次元トラスの座標変換行列 T が求まります。

プログラミング MATLAB 有限要素法

平面(二次元)トラスの座標変換行列 T は以下のようになります。

プログラミング MATLAB 有限要素法

この座標変換行列 T を用いて、要素座標系の剛性方程式を全体座標系に変換します。

詳細説明は割愛します。式だけ以下に示しておきます。

プログラミング MATLAB 有限要素法

以上より、全体座標系における要素剛性行列は以下のようになります。

MATLAB 有限要素法 トラス

となります。お疲れ様でした。

まとめ:要素剛性行列は全体座標系で算出する

今回はFEMの基本的なフローと平面トラスの要素剛性行列の算出方法について解説しました。

この記事では、ある程度の理論を解説しましたが、ほどほどに理解してもらった後は、全体座標系における要素剛性行列の式

MATLAB 有限要素法 トラス

これだけ理解すればOKです。

次回は、各部材の要素剛性行列を接合(アセンブル)し、架構の全体剛性行列を作成する方法から、架構の応力(軸力)、変形を求めるまでを解説します。

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